【前回の記事を読む】大虐殺・民族浄化・強制移住で人口の90%を抹殺。人間ではなく「狩りの対象」。アメリカやオーストラリアで起こった白人の入植
太平洋の波の上で ─22年後─
サクラサクラ
機内の窓からパラオの群島が目に入ってきた。今回は、こどもの頃両親が連れてきてくれたときと同じホテルに泊まることにした。1週間休みをとって、ゆっくりくつろごう、自分自身の人生も見直そうと思っていた。
亜美には、婚約までしていて別れた恋人がいた。理由はわからない。婚約をしてから、相手の両親と既に他界していた父の写真と母と共に旅行へ行ったとき、妙なことが起こった。お風呂を終えて部屋に帰ってみると、母が驚いた顔で亜美に言った。
「ええ、なんで? こんなことが……」
「どうしたの?」
「嫌だわ、お父さんの写真のガラスにひびが入ってる。こんなに大きく、どうして? 何かしら?」
「落としたわけでもないのに、こんなことあり得ないわよね……」と亜美も驚いた。それから、その彼とはことごとくすれ違いが起こり、いつの間にかお互いにやっぱりやめようということになった。
また新たな恋をしよう。きれいな海を見れば、また前を向ける。そんな心境も手伝ってパラオに来た。空港から真っすぐホテルへ向かい、チェックイン。まずはゆっくりお風呂でも入ろうと思っていたところ、ベルが鳴った。
「何か?」
ホテルの従業員が立っていた。
「あなたにメッセージがあります」
ドアを開けると手紙を渡されたが、どうせ何かのツアーの案内かなんかだろうと思い、そのままテーブルに置いて、お風呂へ入った。バスローブに身を包み気持ち良くパラオ初日のビールを一口たっぷりと味わった。「うわー、うまい!」とひとり声を上げた。両手両足を気持ち良く伸ばしてソファーでくつろぎながら、メッセージを開けた。
〝亜美さん。今回パラオのこのホテルにお越しになることをずっとお待ちしておりました。明日、ホテルに午前10時にお迎えにあがります。あなたのご両親から、もしあなたがこの地を訪れることがあれば、案内することを託されておりました。ソフィア・サクラ・フィラン〟
(なんだなんだ? 何が起きているんだ?! でも確かに両親の名前もあるし、これは何かの歯車が回っているのかな? まあ、名前からして女性だし、治安もそんなに悪くないし、大丈夫だろう。こんな旅があってもいいだろう)
亜美は、考えるのが面倒でそんな心境で眠りについた。
翌朝、朝食を済ませ、ロビーで待っていると、何ともいえない優しい笑みを携えて一人の女性が近づいてきた。
「おはようございます、亜美さんですね。わたしはソフィアです。あなたに会える日をずっと長い間お待ちしておりました」