太平洋の波の上で ─22年後─
シャーマン
「そう、彼らは銃とコインを使ってこの大地と人間の心を破壊しました。それまでわたしたちは所有などという意識は持っていないし、お金の豊かさという概念もなかったのです。
そんなものなくても豊かで幸せだったのです。ここの大地もわたしたちの命も全て神々のものだった」
亜美はこの女性の瞳にどんどん吸い込まれていった。
「今のあなたの国は、表向きは豊かです。しかし心は貧しい、わたしたちと同じです」
時はバブル経済が終わったとはいえ、まだまだ日本は経済大国の一つだった。
「亜美、あなたにもいずれ大切なメッセージが届く日が来るでしょう……覚えておきなさい。わたしたちの祖先とあなたがたの祖先はかつて兄弟姉妹だったのよ」
「祖先が兄弟?」
亜美にはさっぱり意味がわからなかった。
「あなたにメッセージが届いたとき、あなたがそれを受け止めるかどうかはあなたが決めることです。わたしたち北米大陸にもともと住んでいた民は、あの山々を、人を欺く目を持った人々に渡してはいけない……と代々教えられてきました。それが引き金で悲劇を起こすことになったの……」
最後に憂いに満ちた瞳と謎めいたメッセージを残し、そしてこんな詩を亜美に手渡して彼女は離れていった。