【前回の記事を読む】新しい恋を見つけにパラオに旅行へと向かう。しかし、ホテルで届いたメッセージカードが謎を呼ぶことに……。

太平洋の波の上で ─22年後─

サクラサクラ

「二回ともガイドをしたのは若かったときのわたしです」

「えーっ、そうだったの?」

「この島での日本とアメリカの戦いのことは?」

「うーん、そういうことがあったことは……それとなく」ソフィアはこの地のことを語り始めた。

「1944年、1万人の日本兵がアメリカ兵5万人を迎え撃つことになり、米軍は2~3日で決着がつくと見越していました。

満洲からこの地へやってきた日本の守備隊長の中川州男陸軍大佐は、米艦隊の艦砲射撃と圧倒的な物量の差の海兵隊と互角に戦うために、先に艦砲射撃をさせ、その間静かに身を潜めて待ち構えることにしたのです。そしてアメリカ海兵隊を上陸させて艦砲射撃ができない状況を作ってからゲリラ戦を展開しました。そして72日間必死に戦い抜きました。

それでも、アメリカの圧倒的兵力の前にはどうにもならなかったのです」

〝諸国から訪れる旅人たちよ、この島を守るために日本軍人が、いかに勇敢な愛国心をもって戦い、そして玉砕したかを伝えられよ 米太平洋艦隊司令長官C.W.ニミッツ〟

神社にはこう刻まれた碑があった。

「このメッセージのことはご存じでしたか?」

「いえ、知らなかったです」

「この地で玉砕した日本兵が最後に日本へ打電したのが〝サクラサクラ〟なんですよ」