【前回の記事を読む】フランチジェナ街道を通って、中世の商人は毛織物などを各地に運んだ。追い剥ぎや盗賊が多く、往来は命がけであった。

フランチジェナ街道とは

フランチジェナ街道の歩き方

 

全長約1700kmもの距離を一気に歩くためには、時間的余裕が必要である。そこで、興味が湧いた街を中心に一部を無理なく歩くことをおすすめしたい。

筆者の場合は、週末に一定区間(約20km~ 30km)を歩くことを繰り返し、ローマからシエナまで約280kmを北上した。

具体的には、妻に早朝スタート地点までローマから車で送ってもらい、夕方頃、予め設定したゴール地点まで迎えに来てもらった。次回はこのゴール地点からスタートして、シエナ方面に歩いたわけである。

旅行者が街道の一部のみを歩く場合には、レンタカーを使う手もあるが、鉄道駅のある街をスタートとゴール地点に選ぶと効率的だ。本書に登場する街の中では、鉄道で気軽に行ける街として、ヴィテルボとシエナを挙げたい。

ヴィテルボはローマから北に100km ほど、ローマ・テルミニ駅から列車で約2時間の場所にあり、中世の趣溢れる旧市街が非常に魅力的だ(4章参照)。ワインで有名なモンテフィアスコーネの街へも約18kmと、歩くのに丁度良い距離である(5章参照)。また、ヴィテルボには政府公認の旅行ガイドの方がいて、各種アレンジを依頼することも可能である(日本語も堪能な Susanna Biganzoli さん/ http://www.italiatuscia.com)。

シエナの街はローマから列車で3時間半ほどである(11章参照)。途中乗り換え駅のフィレンツェまでは日立製の車両の高速鉄道(フレッチャロッサ)が頻繁に出ていて便利である。

本数は少ないものの、高速バスでもローマから約3時間で到着する。近隣の街ブオンコンヴェント駅までは、シエナから列車で約30分である(10章参照)。

実際にフランチジェナ街道を歩きたいと思った方は、事前に欧州フランチジェナ協会(EAVF)の公式ホームページを確認してほしい(「はじめに」参照)。

このホームページにはフランチジェナ街道の概要、ルート説明など、歩くための情報が網羅されている。様々な公式グッズもあり、中でも筆者のおすすめは、「巡礼パスポート」(Credenziale)というスタンプ帳である。

これは後にフランチジェナ街道を歩いた証明にもなり、道中で様々な特典を受けるための会員証の役割も果たす。フランチジェナ街道のスタンプは、街道沿いの観光案内所やタバッキ(Tabacchi: 雑貨屋兼たばこ屋)、バル (Bar:カフェ) 等にある。

スタンプは全てオリジナルのご当地スタンプである。更に、フランチジェナ街道を歩くからには是非手に入れたいのが、バチカンでもらえる「巡礼証明書」(Testimonium)である。

フランチジェナ街道のうち、100km以上踏破(自転車の場合には200km以上走破)した人は、サン・ピエトロ大聖堂で各地のスタンプが押された「巡礼パスポート」を提示すると、名前入りの「巡礼証明書」を発行してもらうことができる(129頁参照)。この証明書は、踏破の何よりの記念である。