私が経験した事例では、支援者の困っていることに寄り添いながら、子どもについても一緒に考えました。結果的に、子どもと相談機関がつながり、その隙間を埋めてくれた支援者とともに、協働でその子を支えるという、より効果的な支援につながりました。
「AだからBをすればいい」という状況はあらゆる分野で起こることです。それについて、その隙間にある支援を意識し実践することも、悩んでいる人を救い上げる一手になるものと考えます。
コラム④
ゲートキーパーとは
身近な人の自殺の危険を示すサインに気づき、声を掛け、話を聴いて、必要な支援へとつなぐ役割を担う人のことです。自殺の問題がクローズアップされ、日本各地でゲートキーパー養成講座が開かれ、私も含め何万人もの方が受講しています。そのため、せめて相談を受ける仕事をしている方は、ゲートキーパーとしての対応力を身につけてほしいと願っています。
【事例5】
相談内容:「担当者に話が通じない」という相談。
相談者:80代女性
対応者:若い相談担当者・著者
対応場面:窓口での相談対応
相談者の訛(なま)りが強く、話していることがわかりにくいため、何度も聞き返す相談担当者がいた。相談に来た80代女性は、表情がゆがみ、声も大きくなって、そのうち怒り出すのではないかという状況にあった。見かねた私が、事態を悪化させるのを防ぐため、途中で割って入った。冊子を持参していたため、それを見ながら話を聴いたところ、ある障害福祉サービスを受けたいということがわかった。