2-4-4

【訳】
山桜よ私と一緒に哀れみ合おう
私にはお前以外に知る人が誰もいないのだから
【歌人略歴】
前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)1055-1135年。行尊は大峰山、葛城山、熊野などで修行し、修験者として知られた。1107年に鳥羽天皇の護持僧となり、加持祈祷によりしばしば霊験を現し、公家の崇敬も篤かった。1125 年に僧官制の頂点に位置づけられる大僧正となる。
歌人としても有名で、『金葉和歌集』以下の勅撰和歌集に、48首入集している。家集に『行尊大僧正集』がある。
2-3 解説
村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕ぐれ
契りおきし させもが露を いのちにて あはれ今年の 秋もいぬめり
哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
もろともに あはれと思へ山桜 花よりほかに 知る人もなし
最初の2首は、秋の夕暮れの寂しさ、心あてにしていた任官が果たせない残念さを、「露」を題材にして歌ったものです。この2首は並列した本歌というのではなく、1首目は2首目の前置歌的に配置されているようにみえます。
続く2首は、前2首の雰囲気を引き継いで、「あわれ」という気持ちをしっかりと歌い込んでいます。
1~2首では「露」が題材になっています。
露もまだひぬ(1首目)
させもが露を(2首目)
2~4首にわたっては「あわれ」が共通しています。
あはれ今年の 秋もいぬめり(2首目)
哀れとも いふべき人は(3首目)
もろともに あはれと思へ(4首目)
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