「こんなバカな! だれかが、ねているあいだに切りとったにちがいない。だけどよう、おいらは、ほんとうに赤べえだよ。ほら、顔をみればわかるだろ。な、信じてくれ、信じてくれよ、なあ」
しかし、鬼どもは、にやにや笑いながらつめよってくる。
「どうしたんだい。みんな、おいらがわからないのかい。いつも、いっしょにいたじゃないか。こないだだって、いっしょにイノシシをしとめて、食ったじゃないか。なあ、思い出しておくれよう」
泣き声になってかきくどいたが、その言葉がおわらないうちに、ドラがジャンジャン鳴りひびいて、島じゅうの鬼という鬼がとびだしてきた。
まっさきにかけつけたのは、いとこの青ノ助だ。赤べえがよろこんでかけよると、青ノ助は、にやりと笑って、小気味よさそうにこういった。
「おお、ここにいたのか、雷光の手下めが。今日という今日は、先祖の恨みをはらしてくれるわ。さあ、みんな、こいつをつかまえて、塩をふりかけて、朝めしにしようぜ!」
たちまち石や岩が、アラレのようにふりそそいできた。赤べえは頭をかかえて逃げまわったが、とうとう島のはずれの断崖に追いつめられた。
「下は海だ。取りおさえろ!」
青ノ助がわめくと同時に、巨大な石矢が、喉もとめがけてとんできた。首をすくめてやりすごすと、こんどは金棒が、ギューンと鈍いうなり声をあげてとんでくる。
「たすけてくれえ!」
とびあがったとたん、足もとがくるって、そのままはるか下の海に落ちていった。
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