【前回の記事を読む】妻はお茶の「準教授」資格を持っている。お花でも師範だ。私は妻がやっていることに無能だ。

第四章 2015年(後)

12月13日(日)
おいしい

朝食のあとで良子が、「おいしかった」と言った。あい子が昨晩作ってあった豚汁の、特に里芋がおいしかったらしい。良子から「おいしい」という言葉を聞くのは、退院後、初めてであった。

10時過ぎに家を出たのであるが、そのときは、徳島から送られた温州ミカンを食べていた。少し食欲が出てきたようである。

体重は59kgだったのが、今は52kgを切るまで落ちたらしい。私にしても3kgは痩せたのであるから、本人はむしろ当然と言える。食が進めば、体重も徐々に挽回していくだろう。

今日は国立劇場で、幸四郎、染五郎たちの『東海道四谷怪談』を観た。染五郎、先月歌舞伎座の『勧進帳』、富樫左衛門で感じたことを、今日のお岩ほか五役で確認した。一皮剥けたと思う。

12月14日(月)
B医師の説明

今日は大腸がん手術執刀医・B先生の説明があった。11月2日の施術から40日、11月13日の退院からでも1カ月を過ぎている。途中で癒着によるイレウス発症のアクシデントがあったとは言え、のんびりしていると思う。

患者とその家族が何よりも知りたいのは、疾患の深刻度である。他臓器への転移の有無である。

9時半にT医院で丸山ワクチンのB液注射を受け、その足でみなと赤十字病院へ行った。血液検査を受け、結果を待って11時半からB医師の説明を受けた。