【前回の記事を読む】あの饅頭がいけなかったんだ。ゼッタイ、おなかいっぱい食べてはいけないと、先生に言われた。
第四章 2015年(後)
12月6日(日)
3度目の「退院」
空気は冷たいが空は澄んで気持ちよい。10度前後と思う。
9時10分に良子の病室へ行った。請求書ができていたので1階に下り、支払いを済ませた。
10時過ぎに先生の回診があった。手術の傷跡が点検され、それで退院OKであった。
私は荷物を、地下駐車場の車に置きに行った。そして私たちは時間外出入り口から埠頭側へ歩いた(今日は日曜日で、正門は閉まっている)。
水面に水鳥が浮いている。空の薄い白雲が美しい。静かだった。
帰りに「本牧館」でパンを買い、スーパーで果物とうどんを買った。帰宅したのは11時30分少し過ぎだった。
良子のために作っておいたワタリガニのスープと、その味のしみた豆腐、魚のアラを出汁に煮込んだ大根、その説明をした。調味料は一切入れていなかった。
「水がわりにスープを呑んでもいいと思うよ」
良子は、そうすると言った。12時に家を出て、車で新国立劇場へ向かった。オペラパレスで『ファルスタッフ』があった。オペラパレスのチケットは1年半も前に入手している。今日の状態を想定すべくもなかった。良子は勿論、笑顔で送り出してくれた。
途中ベイブリッジが、改修工事のため二車線規制していた。(二車線規制というのか一車線規制というのか、要するに三車線のうち二車線が閉鎖された)20分余り渋滞した。三車線が二車線になり、更に進むと一車線になった。
一車線になると、車は普通に動き始めた。「これがお母さんの状態や」と私はあい子に言った。