空は澄み切って青い。私はカバンから本を取り出して読み始めた。ボブ・ビュフォードという人の『ドラッカーと私』というものである。

アメリカにおけるキリスト教会の活性化に、経営学者ドラッカーの指導が重要な役割を果たした、そのレポートである。私が現在日本のカトリック司教団にほぼ絶望しているのは、ここに書かれている要素が日本の司教様方に欠落しているからである。

ここに書かれた通りをやって日本で成功するとは思わない。しかしそれは応用の問題である。本質は、一番大切なものは何か、その実現のために何が有効で何が有害か、自分は何をすべきか、その把握と実行である。

読みながら眠ってしまったらしい。良子の手が私の肩に置かれ、私は気付いた。良子が私の横にいた。

「しばらくここにいようね」

そう良子は言った。私は安らぎを感じた。このような状態がずっと続いてくれたなら。……

「3月にはお伊勢参りできるかしらん」
「それがまずの目標だね。最初の1カ月は慎重に慎重に、次の3カ月は恐る恐る、それを過ぎたら次の半年は少し大胆に、……そんな感じかな。1年はかかるよ」
「ゼッタイ、おなかいっぱい食べてはいけないと、先生に言われた」

部屋に戻った。

「少し外へ出てみようか? そしてそのまま帰ったら?」
「うん、そうしよう」

良子は部屋着の上に薄手のコートを被っただけで行こうとした。

「外は寒いよ。それじゃ風邪引くよ」

良子は袖なしのはんてんをコートの下に着た。それでも寒いと思ったが、短時間だからいいかと私は思った。

埠頭側に出たら案の定寒かった。記念写真を一枚撮って、すぐ引き返した。1階の売店で良子の飲物を買い、エレベーターで良子は上へ行き、私は地下の駐車場へ向かった。

 

次回更新は4月27日(日)、20時の予定です。

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