夕食を終えたところであった。五分粥はほとんど手を付けていなかった。しかしおかずはほぼ全部食べていた。退院をさほど喜ぶ風でなかった。と言って、悲観的でもなかった。淡々としていた。
「今度は、慎重に慎重にいこうね」と私は言った。良子はうなずいた。
「あの饅頭がいけなかったんだ」良子は笑った。
帰り、スーパーに寄った。ワタリガニを2パック買った。スープを作っておいてやろうと思った。
12月5日(土)
前日
今日は土曜日なので14時半に良子を訪ねた。空気は冷たかったが、好天であった。
あい子が起きてくるのを待ったが「爆睡」しているのであろう。会社(複数)の決算作業と重なって、随分苦労を掛けた。起こすのは可哀想なので一人で家を出た。
病室に入ると看護師さんがいた。二人は談笑していた。
「大丈夫か? もう1週間ほど置いてもらった方がいいんじゃないのか?」
「大丈夫よ」
看護師は、かははと笑った。
「すぐまた引き返すのはイヤだよ」
「今日も3回、行ったわ」
「3回? それ下痢じゃないのか? 大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」と看護師が言った。
「これからシャワーする。30分くらいかかるから外で待っていて。デイルームにいてくれる?」
私は指示に従って部屋を出た。窓外に本牧埠頭につながる首都高速が広がっている。私が常に乗り降りする場所である。