「ところで金森さん、別件で頼みごとがあるんだが、いいだろうか?」
『私にですか? 私個人に?』
「そう、あなた個人に。金森さんは情報分析官だから、ここを離れて警視庁に戻るタイミングがあるだろう」
『分析官の仕事はご存じですもんね。そうですね、一旦戻ることはあると思いますが』
「その時に、警察内部のデータベースにアクセスして、今から言う言葉でヒットする情報を調べて欲しい。過去に起きたどんな事件や事故でも、大小は問わない。何でも構わないから」
『ええと、その言葉って?』
「『時計の針』『喜劇』『円盤』、この三つだ」
『それ、犯人と繋がりがあるんですか?』
「おそらくは。会話の中で少し気になった言葉だ、できるだけ早く調べてくれ。それと、この件は、誰にも知らせないで欲しい」
『おっと、探偵モノじみてきましたね』
どこか楽しそうに金森は発言した。警官としては妙な性格だ、と先ほどから仲山は感じている。果たして金森は、一市民の頼みを了承した。
『わかりました。関係ないこと調べるなって貝崎さんには怒られそうなので秘密でやります。私も、犯人逮捕の一助になりたいですし。元捜査員の勘を信じますよ?』
「ああ、よろしく頼む」
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