【前回の記事を読む】妻が先に逝ったら、どう生きれば良い? 生きるのがめんどくさくなるだろう。三回忌を終えたら、あとを追おうかな、なんて…
第四章 2015年(後)
11月18日(水)
兄の死、良子の再入院(2015年11月18日)
朝からどんよりしていたのであるが、午後から雨になった。このところ、よく降るように思う。
今日は栃木の工場へ行った。水曜日が定例になっている。5時45分に家を出る。今朝も良子は私の持ち物をチェックし、表まで見送ってくれた。
ただ、いつもは扉の外まで出て来るのであるが、今日は扉の内側で「行ってらっしゃい」と言った。
11時に、あい子より、おじさんが亡くなったとの知らせが入った。
すぐさま帰りの電車に乗った。その車中へ、お母さんが入院した、とのあい子からのメールが入った。
長兄はグアムで戦死した。
次兄は満州へやられたのであるが、なぜか不思議に、実戦には一度も遭遇しなかったと聞いた。しかも終戦間際まで満州にいたのでなく、その前に国内配属になった。その意味では極めて幸運であった。そういう部隊もあったのである。
ただ、部隊内でのイジメはひどかったと、ポツリと漏らしたことがある。次兄はついに、兵隊時代のことをほとんど語らなかった。
性格は、童話の主人公にしても良い、底抜けに善良な人物であった。人間の質としては、私なんかよりうんと高みにある人だった。
90歳。兄は満足の中で私たちに手を振ったと思う。
ということで、今夕はとりあえず良子を訪ねた。
鼻からチューブが入れられていた。
ただ、それなりによくしゃべるので、多少は安心した。
帰って徳島行きの手配をした。明日朝、徳島へ帰る。
徳島空港でのレンタカーも手配した。