魁桜(さきがけざくら)

時間が進まないように願った一週間は瞬く間に過ぎた。

付き添いは桜子に頼んだ。

「病院の予約時間に合わせて、車で迎えに行くさかい、だいじょうぶえ」

電話口から桜子の明るい声が聞こえた。当日、桜子と診察室前で待っていると、予約時間から五分ほど過ぎたとき、診察室に入るよう、夕子の外来番号がアナウンスされ、同時に診療呼び出しのディスプレーに番号が表示された。夕子は胸が高鳴るのを抑えることができない。少し躊躇(ためら)っていると、

「さあ、かあさん、荷物はウチが持つさかい」

桜子に背中を押されるように診察室に入ると、

「やあ、おはようございます。どうぞお座りくだい。付き添いは娘さんですか?」

主治医は机の上のパソコンに時どき目を向けながら、夕子の目をしっかり見た。桜子が自己紹介して付き添い用の椅子に座る。

主治医はまたパソコンの画面を見つめたが、向き直ると、

「初期の大腸がんです。これなら内視鏡下手術で取れそうですから、だいじょうぶですよ」

主治医は夕子にとっては重大事をさも簡単そうに告げた。さらに画像を夕子と桜子に見せながら丁寧に病状を説明してくれた。