「そう言われれば、名前の方がいいわね」

「じゃ、ヤッチンはヤッちゃんと呼べばいいの?」

話に加わったシズちゃんの質問に、

「ううん、私はずーっとヤッチンと呼んでもらうの」

「そうね、ヤッチンをヤッチン以外の名前で呼ぶなんて全然考えられないものね」

シノちゃんの言葉に、みんながうなずき合ったあとで、シズちゃんが、

「でも、ヤッチンはどうしてヤッチンって呼ばれているの?」

「それはね」

ヤッチンとは幼馴染のシノちゃんが、シズちゃんに笑いかけながら、

「ヤッチンが可愛かったからなの。ヤッチンがまだ小さくて、言葉を話し始めたころに、自分のことを『ヤッチン』て呼んだんですって。本当は『ヤチヨちゃんがね』って言いたかったんだけれど、上手に言えなくて『ヤッチンがね』になっちゃって、それがあんまり可愛かったから周りの人がヤッチンと呼ぶようになったの」

「ふーん、ヤッチンは可愛かったんだ」

シズちゃんのつぶやきにヤッチンは、

「いまでも可愛いけどね」

笑いの渦がおきた。こんな、たわいもない話をして笑いながら歩いていると、朋は彼女たちの仲間に入れてもらえたことを、しみじみと感じるのだった。

   

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