【前回の記事を読む】定規で五本の平行線を引き、オタマジャクシを一つ一つ写す。市販の五線紙は高価で、このころは手に入れにくくなっていた。「歌いながら色を想い浮かべられる曲があるだろう。『冬景色』の一番なら冬の早朝の霜を思い出す白だ。小春日和の温かい白でも、時雨の寒々しい白でもなく、ここは霜の淡い白でなければならない。この『秋のさゝやき』では何色がこころに浮かぶ?」「歌詞に『大空を流れゆく黄(き)ば…
[連載]しあわせについて
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小説『しあわせについて』【第6回】杉野 六左衛門
「午後3時過ぎの少し赤味がかった黄色」で歌声を重ねる──先生の指導のおかげで音楽が出来上がっていく様子を初めて経験した
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小説『しあわせについて』【第5回】杉野 六左衛門
定規で五本の平行線を引き、オタマジャクシを一つ一つ写す。市販の五線紙は高価で、このころは手に入れにくくなっていた。
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小説『しあわせについて』【第4回】杉野 六左衛門
戦争の役に立つから、合唱部は存続をゆるされた。―学校生活が戦争に染まり、体育系の部活でさえコートが畑になり休部する中…
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小説『しあわせについて』【第3回】杉野 六左衛門
軍需工場へ勤労動員に出ている二年生に代わって、特別に三年生が一年生を指導をするという。
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小説『しあわせについて』【第2回】杉野 六左衛門
「三つの歌声の調和がこんなに美しいとは…」初めて本式の女声三部合唱を聴き胸が震えた
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小説『しあわせについて』【新連載】杉野 六左衛門
家族はみんな忙しくて、姉ちゃんは私に無関心。だから育ての親は、ばあちゃんだった。綺麗で優しくて、私は大好きだった。