一年生
朋たちを見つけた部長の生徒がステージを降りてきた。
「こんにちは岩代さん、きょうは部活の見学?」
「はい」
部長は目で朋を示しながら、
「この娘(こ)は?」
「こんど市女から進学してきた栗山朋さんです」
「それで見学に連れてきたの?」
「はい」
「栗山さん、合唱部は気に入った?」
「はい、素晴らしかったです。感激しました」
「じゃあ入部してくれるわね」
「でも、わたしには難しそうです」
「大丈夫よ、みんなそう思って入ってくるんだから。音楽の経験は?」
「ありません」
「でも、音楽の授業は取ったんでしょ」
部長は朋をガッチリと捕まえて、放してくれそうにない。
「はい」
「なら大丈夫よ」
「でも、楽譜も読めませんし」
「そんなの構わないわ、大丈夫よ」
「はい……」
「じゃあ、あした入部願いを持ってきてね」
「はぁ……」
朋は、なんだか上手に丸め込まれたような気がした。