【前回の記事を読む】うっかりと口にした「夕飯、一緒に食べに行きませんか」という言葉がきっかけで夕食に行くことになり、いまでは.....
第3章 回転寿司
彼女は、
「はーい。頑張りまーす」と言って、ボールを打った。おじさんは、
「うん、いいね。音がいいね」
でも今度のボールもさっき打ったボールも大した違いはなく、そこそこよいボールだ。
彼女は、おじさんのほうを振り向くと、
「どうもありがとうございます」
と言って、首をかしげた。おじさんは彼女と目が合うと、ブルッと震えて、背中を丸め、手をこすりながら自分の打席に帰っていった。
その姿を二人で見た。私が、彼女を見ると、彼女も私を見た。目を合わせ、言葉には出さなかったが、二人で微笑んだ。私は、嫌な爺さんだねと言いたかったが、彼女は、そんなことは言わないだろうし、思ってもいないだろう。
ところが、彼女は小さい声で、
「やれやれ」
と言ったのだ。
練習中に、私は彼女を自分の入会しているゴルフクラブに誘った。
「山西(にしやま)ロイヤルカントリークラブなんだけど、近いうちに一緒にラウンドしませんか」
「聞いたことあります。きれいなゴルフ場なのでしょう。是非お願いします。連れて行ってください」
すぐにオーケーをもらい、自分のゴルフクラブを褒められ、こんなにうれしいことはなかった。二人の関係がいつだめになるかという不安が薄れ、まだ続くということが決まったように思えた。