俳句・短歌 短歌 故郷 2020.08.25 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第7回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 友慕う飛行機雲が浮かんでる 切なさ乗せて渡り行く哉 夕涼み秋の名月独り観る 見目麗しさメールで送る 柿の木に雀舞い降る秋情緒 原風景をメールで送る
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『メグ動物病院』 【第10回】 後藤 あや 「こんな料金でいいんですか、今までのお医者さんは…」と言おうとしたら、イケメン獣医は「この料金、むしろぼったくり」と… 「お父さん、腕までの厚めのゴム手袋をするといいですよ」って言ったけど、メグ先生の腕は、傷だらけ。うっすら血も。豪快にマキロンを振りかける。ちょっと診察室を離れてた看護師の琴美さんが戻ってきて、「またなの」ってあきれ顔で言う。「何で待てないのよ、一人じゃホールドもできないじゃない。ばかね、痛いでしょ。私が朱美に叱られるのよ」って怒るから、みんなびっくり。「どうも教育がなっておりませんで」って先生言…