[五]
また雨が降ってきた。愚図ついた空から、まるで梅雨時のような絹雨が降ってきた。蝉の声もすっかり影を潜め、いよいよ秋の到来を予告するかのように思われた。
あれから和美は部屋に閉じ籠もったままだった。だが源造親娘はそっとしておくことにした。何を拗ねているのかは知らなかったが、こうしたことは以前にも何度かあったのだ。
「なあに、今にうずうずして出てくるさ」
源造はそんなことを言って笑った。彼らの気がかりはむしろ骸骨の方だった。あの北海道からの訪ね人が来てからというもの、めっきり元気がなくなった。まるであの男の登場が何らかの打撃を与えたみたいだったのだ。
「なぁ、あいつ覇気がないな」
「ええ、わたしも気になって。仕事をしていても、何か気詰まりなことがあるようで」
京子も眉を曇らせて相槌を打つ。
「もしかしたら‥‥」
突然洋子が口を挟んだ。骸骨が呼ばれた時にピンと来たのだ。
「何だ、何か思い当ることでもあるのか?」
「う、うん、実はガイ骨さんがここへ来た頃、しきりにつけ回している探偵がいたのよ」
洋子は先日のヘマな探偵のことを話してみた。
「うぅん、そうか、成程な」
何が成程なのか不明だったが、源造は腕を組んで唸った。母娘も眉根を寄せて頷く。