【前回の記事を読む】腹を立てて受話器を伏せてから2日後、彼女から速達が届いた。中には手紙とお札。「初めて会ったのは、小学校五年生の春でした。あの頃は......」

遮断機

中学に入る時、父は家業の呉服屋を継ぐことになり、私たちは再び京都に帰ることになった。

私は、広島に越して来る時以上にこの引っ越しが嫌だった。と言うより、恭平、あなたと離れたくなかったんです。

だから、京都に住むようになっても学校が夏休みになる度に、私は広島に住む姉の家に遊びに行った。

あなたは暑い太陽の下、一時間近く自転車をこいで私に会いに来てくれた。

それが私の楽しみで、中学、高校、大学と、広島行きを欠かしたことはなかった。

あなたが気にしていた私との身長の差も、中学三年生の時に逆転し、高校から始めたサッカーのせいか、あなたは随分と男らしくなっていった。

私は高校から女子大へとストレートに進んだけど、あなたは二年遅れで稲穂大に入った。浪人が決まったあなたを慰めた時、あなたは強がりを言って私を喜ばせた。

「馬鹿野郎、心配するな。俺は男だから、一年やそこら遅れたって大丈夫だ。雅子は自分のことだけ考えてりゃいいんだ」

そんな見栄っ張りな恭平が、私は大好きだった。

正直言って恭平に初めて会った時から、別れを決意した今の今まで、ずっと恭平が好きだったけど、その間に恭平以外の男の人を何人も好きになったことがあります。

時には、結婚してもいいと思うほど好きな人もいました。

でも、どんなに好きになっても、その人の影にニコニコ笑っている恭平がいた。