「あぁ、そうかい。お前は金持ちの一人娘で、俺は貧乏人の小倅(こせがれ)さ。お金なんかございませんよ。余ってりゃ恵んでくださいよ!」
なんて情けないこと言うから、売り言葉に買い言葉、
「お金が欲しいなら恵んであげるわよ!」
私は思わず叫んで、受話器を叩きつけてしまった。電話を叩きつけた後、口惜しくって、悲しくって、情けなくって、涙がボロボロこぼれて止まらなかった。
あんなに大好きだった恭平から、お金を無心されるなんて。
もっともっと大きくて、温かな人だったはずの恭平が、急にちっぽけなどこにでも転がっているツマラナイ男の子に感じられて、これまでの心の支えを一気に失って、私は一晩中泣いたんです。
恭平の馬鹿! 恭平の弱虫! 恭平の卑怯者! 恭平の裏切り者!
もし、心底私が好きだったら、もし、結婚を本気で考えていたのなら、口が裂けても「金をくれ!」なんて言えないはずです。
同封のお金はあげます。返信も返金も不要です。沢山の思い出をありがとう。
もう、一生会いません。会いたくもありません。
私に代わる不幸な女性のためにも、もう少し上等な男になってください。
さようなら! 本当にサヨウナラ!
大好きだった恭平へ
一九六九年十一月十一日
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