第2章 専門医は脳梗塞をどのように診断するのか?

専門医は脳梗塞をどのように診断するのか?

◎脳画像検査

MRI拡散強調画像とは?
次の画像は組織水分子の動きを示すもので、CT像では異常所見を呈さない時期に、MRI拡散画像では脳梗塞発症後、数分以内に起きる細胞内浮腫を捉えることが可能です(図1~2)。

1)脳梗塞急性期には、細胞内浮腫が血管原性浮腫よりも優位なため、細胞内構築の改変や細胞内粘稠度の上昇が起こり、その結果、細胞内水分子の拡散低下を来し、病変が高信号となります。

2)脳梗塞慢性期には、細胞膜の破壊から血管透過性が亢進し、血管原性浮腫が優位となり、細胞内水分子の拡散亢進を来し、病変が等信号あるいは低信号となります。要するに、こうした画像特性を活かして、多発性脳梗塞で、新しい梗塞巣(高信号:白色)と陳旧性の梗塞巣(低信号:黒色)を鑑別することが可能となります(図3)。

[図1]脳梗塞超急性期のCT画像(異常所見を認めない)

[図2]上図と同時期の拡散強調MRI画像(異常所見を認める)
[図3]急性期脳梗塞のMRI 画像。
左図:拡散強調画像、右図:ASL灌流画像(Arterial Spin Labeling;T1-1800msec)
(MRI で造影剤を使用せず脳血流灌流状態を観察する撮像法)

脳血管撮影(脳血管の造影検査)
脳血管撮影とは脳血管の状態を血管内に造影剤を入れて調べるレントゲン検査のことです。

頭蓋骨を消去して血管のみを際立たせる方法をDSA(Digital Subtraction Angiography)(ディ-エスエイ)といいます。この検査の目的、対象疾患、方法、危険率や重篤な合併症を重点的に説明いたします。

本検査は、患者さんの疾患の診療上、必要性が高く、特に脳血管疾患の診断、治療においてとても重要な検査ですが、検査の有益性が危険率を上まわると判断した場合のみ検査をすることになります。

担当医からよく説明を聞き、ご本人やご家族の皆さまで十分に話し合って検査をするかどうかを決定してください。なお、脳血管撮影検査の方法は、検査として用いられる他に、脳動脈瘤、脳血栓・脳塞栓、脳腫瘍、脳動静脈奇形などに対する血管内治療法(血管内手術)としても用いられます。