M: 私も軽い発言だな~と思いましたが、中断を繰り返している人ってこんな感じです。まあ、重症化して救急車で運ばれる前に受診したのでよしとしました。
A: みなみ先生、気が長いですね。私だったら激怒しちゃいそうです……。
M:この方は糖尿病の病歴が長く、インスリンの分泌能力が低下していたため、注射でインスリンを補充している状態でした。治療中断でインスリンが不足したため糖を脂肪に変えられず、どんどん痩せてしまったというわけです。
A: 「糖尿病で激痩せする」って聞いたことありますが、インスリンが不足するから激痩せしてしまうんですね!
M: そのとおりです。この患者さんは再診を機にインスリンを再開しました。すると、わずか3週間で体重は6kg増加、随時血糖値も100mg/dl台に回復しました(図6)。
A: インスリンを中断したら体重が減り、再開したら増えていることがよく分かります! そうなると、インスリンをしている患者さんは、みんな太ってしまうのですか?
M: インスリンを始めると太りやすくなるのは事実です。ただ、きちんと食事療法を行いながらインスリン注射を行えば、基本的には体重は増えません。しかし、たくさん食べてたくさんインスリンを打てば、血糖値は下がったとしてもどんどん太ってしまうので注意が必要です。
A: インスリンを注射しているという安心感で食べ過ぎちゃいそうですね……。インスリンは肥満ホルモン、この症例でよく理解できました!
11. 膵臓はインスリン工場
M: インスリンは膵臓から分泌されるとお話ししましたが、膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる細胞の塊から分泌されています。
A: ランゲルハンス島は生理学の講義で習いました! 確か人名でしたよね。
M: よく覚えていましたね。パウル・ランゲルハンスさんが17世紀に発見した内分泌腺で、ランゲルハンス島にはα(アルファ)細胞、β(ベータ)細胞、δ(デルタ)細胞があります。では、インスリンを分泌するのはどの細胞でしょうか?
A: たしか、α細胞だったような……。
M: 残念。α細胞はグルカゴン、β細胞はインスリン、δ細胞はソマトスタチンを分泌しています。
A: ありゃりゃ、すっかり忘れていました!
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