第1部 相対論における空間の問題
5 ブラックホールになる星とは
ここで別のことも頭をよぎった。例えばある素粒子が光速度近くまで加速されて質量が増えたとして、崩壊せずに同じ素粒子であり続けるなどとは、私には何となく釈然としないものがある。ただ、質量が増えたからどうなるという理論はないのだろうし、現に崩壊したとか変質したとかいう例はないわけなので、研究テーマにはならないということなのだろうか。
ただし、粒子加速器でブラックホールができてしまうという半ばオカルトめいたことは話題になった。それで言うなら、諸論文においてアインシュタインは光子にも質量が存在すると表明しているわけであり、では光速度で動く光子は無限大の質量を持つはずなのでブラックホール化しなければおかしいではないか。それは相対論がぜひとも弁明しなければならない論点だ。
一応こちら側の理屈を書いておきたい。光子はエネルギーを持つ。したがって E=mc2から、光は質量をもつ。質量をもつものが光速度まで加速されれば質量は無限大になる。したがって光子はブラックホールである。
多少読み得た範囲(例。『E=mc2のからくり』山田克哉著、講談社ブルーバックス)で結論を書いておくと、その疑問に対する回答は「光はエネルギーを持つが質量は持たない」という一方的な決めつけばかりだった。
それはさすがに論外だと思うのだが、相対論の支持者はこれでよいのだろうか。エネルギーを持つが質量を持たないということが事実によって証明されたのだ、それがわからないような奴は一から学びなおせ ……ということらしい。相対論に沿った思考をしているつもりなのに、いつの間にかこちらが現実を無視したことになっている。