第1部 相対論における空間の問題
5 ブラックホールになる星とは
極端に大きな恒星は重力が圧倒的に勝ってしまうので、無限に収縮する状態に入ってしまう。これをブラックホールという。ここでいきなりブラックホールは存在しないと言いたいわけではない。もちろん最後にはそのように主張するつもりではあるが、まずは別のことを考えてみたい。
相対性理論の相対性とは、単純に理解するなら、違う世界線(要するに固有の時間軸を持つということ)の住人は、1つの物理現象に対し、違う結論を出すということだ。
見やすい例として、高速で移動する相手は縮んで見えるという現象を取り上げてみたが、それと同様に、高速で移動する物体の質量が増えるということはすでに現代科学の常識とされている。
これはガリレオの相対性にもニュートンの体系にもない考え方だ。それらは、質量は変わらず、速度の上昇分だけ、物にぶつかったときの衝撃度や、速度を緩める際に使う力が増えるという考え方をする。相対論だけが、質量そのものが増えると言うのだ。
ところで、速度は相対的であるという前提を考慮するに、私が見てブラックホールを形成するのに十分な質量のある星でも、別の観測者には軽すぎると見える場合があるだろう。
その逆ももちろんある。宇宙のすべての恒星について、ブラックホールを形成するに足る質量を持つとみる観測者がそれぞれ存在するはずなのだ。何しろ全銀河はものすごい速度でお互いに遠ざかりつつあるというのだから。
地球のような小型の天体でさえ、見る人の速度によっては、銀河系に匹敵する質量を持つと、相対論の計算上はみなされ得る。恒星ではなくとも、それだけの質量があればもちろん重力に負けてしまう。しかし上記のような話は全く聞いたことがない。
ブラックホールは問答無用でブラックホール、地球は固体としての地球である。ではいかなる特権的な視点がこの質量を決めているのだろうか。これは非常に大きな謎で、しかもすぐに誰の頭にもよぎりそうであるのに、これを扱った論文というものを私は見たことがない。
私の考え得る唯一の理由は、結果論として決まっている、というものだ。白色矮星がそこにあるのだから、そのことに疑問をさしはさまず白色矮星として扱う、という具合に。
大変失礼ながら、思考停止しているのではないか。