「明日は、プリンは出ないようですねえ」

「出ないのか。ちぇっ」

「……不覚にも笑ってしまった。まあ夕食の下げ膳までにマルをして、配膳車の回収袋に入れてもらえれば結構ですよ」

恩ちゃんがその場を去ると、僕は床頭台の抽斗から七味唐辛子を出し、味噌汁にふって啜りこんだ。

「うめえ」

鯖の味噌煮、冷や奴にも七味をふり、口に運ぶ。悪くなかった。

「お兄さん、七味が好きなの? さっきから、たくさんふりかけているようだけれど」となりで食べている鶴本さんが、横から話しかけてきた。

「いえ、好きというわけではないのですが……。使います?」僕は、鶴本さんに七味をさしだした。

「唐辛子に入っている、なんとかっていう成分が、大豆食品と一緒に摂ると髪にいいらしくて」

「ははぁ。カプサイシン・プラス・イソフラボンは効くっていうねぇ」驚いた。

「ご存じなんですか?」

「これでも一応は育毛しているからね。納豆や味噌汁にキムチ入れても同様の効果があるみたいだよ」

「ホントですか! やってみます。実は僕も育毛してるんですよ。テレビ見てもカードの度数減るの早いし、ほかにすることないし」

「でも、カプイソは、ストレス性のハゲにしか効果ないって言われてるね」「そうなんですか。じゃあ、僕には効かないかも。M字ハゲだから」

「そのオレンジのは何? 育毛剤?」

鶴本さんが、床頭台にのったスプレーの容器に興味を示した。

「みかん酒です」