「ご存じでしょう。真波のお腹には赤ちゃんがいました。僕との子どもです。だから、この指輪も、だから」
そういうと横川は抑えていた感情を吐き出した。うおおと声をあげてしゃがみ込んだ。三好は気をしっかり持って欲しいと願うように、背中をさすった。その子どものことを想うと胸が張り裂けそうである。
「横川さん。辛いことをお聞きしました。いま無責任なことは言えませんが、この三ヶ月、私たち警察の捜査が思うように進まず申し訳ありません。事件の進展をご報告できず申し訳ありません」
その純粋な三好の言葉に涙を拭いながら、横川は声を発した。
「いえ、僕のほうこそ取り乱しました。そもそも三好さんと清水さんがいなければ、真波の捜査もしてもらえませんでしたから。そういえばその頃、清水さんが交通事故に遭われて入院されていましたよね」
「ええ、幸いにも命に別状はなく、今は藤市中央病院でリハビリに取り組んでいますよ。私も週に一度は見舞いに行っています。捜査中に交通事故に遭いまして。普段は捜査中でも助手席に座る男だったのですが、なぜその日に限って運転したのか」
三好は悔しさが滲み出るような表情をした。
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次回更新は2月15日(土)、21時の予定です。
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