お散歩大好き

食いしん坊のピッポはよく食べた。

与える食事は容器が空になっても、底を何度でも舐め回すぐらい食欲旺盛だった。おかげでお腹はぱんぱんに膨らんで、大きな風船に短い手足をとって付けたような姿になった。

このままでは健康上よくないと運動をすることになり、散歩が習慣となった。

ピッポはとにかくよく歩いた。リードをぐいぐい引っ張って、いくらでも歩いた。やがて、休日には夫が自転車でピッポを連れ回すようになった。自転車と並行していくらでも走った。持久力はかなりあった。 家に帰ればあとは寝るだけの生活なので、本人はうれしくてたまらない様子で一緒に走る。

あるとき、夫と連れ立って河原へ出かけると、水の流れを見てピッポがとても興奮した。

「ワンワンッ」、水の流れに向かって吠えたかと思うと、渡っていた小さな木橋から水の流れに向かって飛び込んだ。

慌てた人間は、急流に流される寸前のところで、首輪とリードで宙吊りのままピッポを岸辺にたぐり寄せた。以来、木枯らしが吹く寒い冬の日でも、流れとみるとむやみに飛び込もうとする。ピッポは元気いっぱいの風変わりな犬だった。

 

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