大きなモニターに映像を映し出す。当時、LD、いわゆる銀色のレーザーディスクが最先端だったが、今やもうどこにも売っていない。コンパクトディスクがレコードのサイズになっていると思えばよい。一番のヒットは前年発売されたマイケル・ジャクソンの『スリラー』だった。

金曜日の夜と土曜日は、かなり込み合った。店長はベテランの人間が務めていて、込み合うときは私も手伝っていた。飼ったばかりの子犬を連れて、アルバイトの若い子や店長に犬を見せに行った。急に団体さんが入ったから大変だと、店内はてんやわんやだった。私も急遽洗い場を手伝うことになり、仕方なく子犬は店の前の歩道の街路樹に繋いでおいた。

一段落して、もうアルバイトと店長だけで大丈夫と判断して帰ろうと思ったとき、店の外に人だかりができていた。何があったのだろうと見ると、連れてきたビーグル犬の周りを若い女の子たちがとり囲んで、代わる代わる抱っこをしたり、頭を撫でている。

「かっわいいー」などと、黄色い声が飛び交い、また順番待ちの子が早くしてと催促をする。抱かれた犬はまんざらでもない顔をして、若い女の子たちに尻尾を振ってみせている。

またそのとり巻きを見て、通行人が何の騒ぎだろうと足を止めて見ている。あるいは怪訝な顔をして、黄色い声を上げる女の子たちを避けるように遠回りしていく大人たちもいる。

このままではまずいと思い、すみませんと人込みを掻き分けて、子犬のリードを街路樹からほどいた。それを見ていた女の子たちは、

「飼い主さんですか?」

「名前は何ていうんですか?」

「何歳ですか?」

と口々に問いかけてきた。

「名前はピーボディ、略してピッポ。男の子で、生まれてまだ四か月のビーグル犬よ」

そう答える私は、なぜか鼻高々な気分。さんざん待たされた犬は、思い切りリードを引っ張った。