ネムとジド
だが、旦那は、きびしい顔でつづけた。
「ただし、一日じゅう犬ばかりみさせているわけにもいかないから、その犬といっしょに羊の番もしろ。そして、わしがよんだら、犬を飛ばせろ。いいな」
父さんはおおよろこびで、ネムとジドをひきずって羊小屋につれていった。こうして、ネムは、朝早くから、羊飼いといっしょに、羊をおって山にいくことになった。
羊飼いは、ネムがあんまり遅いので、初めのうちこそまっていたが、ついにまちきれずに、ひとりでどんどん山のうえにいった。そのためネムは、ジドといっしょに、林のなかの草っ原にとりのこされた。
ネムは、早く歩いたせいで、疲れきっていたが、それでも、ジドとふたりきりになれたのがうれしくて、ひさしぶりにうたいだした。すると、いつものように鳥や動物たちがあつまってきたが、もうジドを飛ばせようとはしなかった。ジドもまた、じっとネムのそばにすわっているだけだった。
夕方、ネムとジドは、羊飼いといっしょに羊小屋にもどった。そして分けてもらったパンと肉をたべて、ぐっすり眠り、翌朝、また羊をおって山にのぼった。けれども、やっぱり、足がおそいせいで、また林のなかの草っ原におきざりにされた。
こんなことが何日もつづくうちに、ネムもジドも気持ちがおちついてきた。ネムは、ひさしぶりで、ジドといっしょに石や草のうえをとびはねた。ジドはよろこんで、ネムのピョーンという声にあわせて、高く、高く、木のてっぺんまでもとびあがり、ピョーン、ピョーンという声で空を飛んだ。