1回裏 大失態の初ホームラン

野球や遊びが大好きだった。親は勉強にも興味を持ってもらいたかったのだろうが、勉強するよりも野球をして遊びたい、教科書を読むより野球の漫画を読みたい、そんな気持ちの方が強かった。

だから、親の目を盗んで野球をやろうとし、また、勉強をしているフリをして野球の漫画を読み耽(ふけ)った。

学校では図書の時間という授業があり、僕は文字だけが並んだ文学などの本を読むのは苦手で、本であっても野球の関係のものが読み易い。この時間、僕はいつも不滅のホームラン王、『ベーブ・ルースの伝記』を読んでいた。週に一度あるその時間、いつも同じその本を読むことを楽しみにしていた。

その頃、兄や近所の子と一緒に野球をやったり、一人でボールを壁にぶつけて練習したり、素振りなどをするのが野球の活動の中心だった。しかし、野球をやるスペースは本当に少なかったし、また、塾などに通わなくてはならず、遊ぶ時間も限られていた。

勉強の合間、「少しは遊ばせてくれ」と僕は常に思っていた。

その少しの時間が許されるように、僕は母の前で探り、その時間を作れるように努力する。遊びに出ることを許されて外に出ると、遊びは、もちろん、野球だ。ボールを壁にぶつけて一人で遊ぶ。空き地で友達や兄と野球の試合をすることもあった。

空き地のスペースは決して広くないので、ホームベースから見て、一塁と三塁の角度が、本来なら九十度であるべきところが、少し狭く六十度ぐらいだっただろうか? 

縦長の空き地。レフトやライトに打球を打つと、他人様の家にボールを打ち込んでしまうことになりそれはご法度。大きな打球はセンターに打たないとダメだった。

   

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