第1編 野球との出会い
1回表 初めてのグローブ
それから間もなくして、夏、父の転勤で家族は東京へ戻ることになる。兄と僕は、東京へ戻る際に、父に大阪万博へ連れて行ってもらうことになった。母と姉は万博には行かずに東京へ直接旅立って行った。
広島から大阪へ電車で行き、僕らは万博会場へ着く。今まで見たこともないようなものすごい人の数だ。日本人のみならず、外国からの観光客もたくさんいる。
いくつかのパビリオンに入って、それこそ日本とは違う異国の文化などに触れることになる。この約一年前にはアメリカのアポロ11号の月面着陸のニュースもあり、宇宙空間への誘いも感じられるような、未来へ向けた素晴らしい催しだと子供ながらに思い、感じた。
この万博で忘れることのできない思い出は、とても美味しいワッフルを食べたことだ。
バターの香りが特徴的な生地はカリカリとした食感で、そこに生クリームが添えられていた。口に含むとふんわりと甘く、その瞬間とてつもない幸福感に包まれた。世界のどこかにはこんなにも美味しい食べ物があるのかという感動。食べ物であんなにも感動したのは生まれて初めてだったと思う。
小学一年の二学期目から都内の小学校に通い出した。転校生として途中からのスタートだったが、周りの人とはすぐに仲良くなり友達もすぐにできた。学校から帰ると鞄を置いて、すぐに「今日、遊ぼう」と約束した友達の家などに遊びに行く。ウルトラマンやウルトラセブンなどが流行り、怪獣のおもちゃなどで遊んだ。
それも嫌いじゃなかったけど、野球への関心、興味の方が強く、グローブを手に、外でキャッチボールやバットを振り回している方が好きだった。