第1編 野球との出会い
1回表 初めてのグローブ
食事が終わると、僕は袋からユニフォームを取り出して、ユニフォームに着替えた。生まれて初めて着る野球のユニフォーム。背番号は「1」、頭の中は王選手になりきっていた。
子供の頃、外で遊ぶのが大好きだった。僕はユニフォームを買ってもらったが、それを外で着る機会がなかなかない。友達と遊ぶ時に一人でユニフォームを着ていても浮いてしまう。
そもそも、ユニフォームは、チームで同じものを作ることに意味がある。でも、僕にはそのユニフォームは宝物で、時々、一人、家で着ていた。
学校に行くのは楽しく、男の子も女の子も一緒になって遊ぶ。その当時、皆、ドッジボールが好きで、クラスの友達、皆で楽しんだ。僕の投げる球は速く、皆に恐れられたが、女の子に対しては手加減をしたつもりだ。
クラスに一際笑顔が素敵で、可愛い女の子がいた。いつも微笑んでいて誰からも好かれそうな、感じの良い女の子。
僕は体を動かして、走ったり、投げたりすることが好きだったが、仲のいい、ちょっと上品な男の子の友達に誘われて、クラスの女の子の家に遊びに行くことになった。
そこに、僕が可愛いと思っていた笑顔の素敵な女の子も遊びに来て、男の子二人、女の子二人の四人で遊んだ。僕は、その女の子に、何か、特別な意識を持っていて少し緊張していた。女の子はいつも笑顔で、優しく人を包み込むような感じで、四人で楽しく、幸せな気分で遊んだ。
野球も良いけど、このように女の子と話しながら上品に遊ぶのも良いものだなぁ、と感じた。
でも、やはり、次の日からはグローブとボールを持って外に出る。小学校一年から二年、勉強も多少はやっていたけど、本職は遊ぶこと。体を動かして遊び、お腹を空かして家に帰り、ご飯をしっかり食べる、それが一番大事だった。
小学校二年も終わろうとしていた頃、あさま山荘事件が起き、両親や姉、兄はテレビに釘付けになっていた。僕は、事件の詳しいことはわからず、ただ怖いことが起きていると思って、あまり興味は湧かなかった。