その後、クリスマスのご馳走を買って、母と僕は家路についた。母の言うことを聞いて、買い物の荷物もたくさん持った。野球のユニフォームを買ってもらって、僕は興奮していた。嬉しくてたまらなかった。

いつもガミガミうるさい母を女神のように感じる。前に父からグローブを買ってもらった時、父を神のように思ったのと同じ感覚だった。

家に帰ると父と姉、兄が食事を待っている。母が急いで準備をして、クリスマスのディナーをいただく。

「今日、デパートでユニフォームを買ってもらったよ! デパートはものすごい人だった!」

「そうか、良かったな」兄は言った。

「ジョニー、良かったわね!」姉はいつもの優しい笑顔。父は、といえば、黙ってチキンを食べていた。

その時、テレビのニュースでは「今日の都心のデパートは、人、人でごった返していました」と放送していた。

ウチでは、夜ご飯は七時からで、その時はNHKニュースを見ることで決まっていた。

学校の友達は、夜七時からの漫画など、子供向けテレビ番組を見ていたようだが、僕のウチは、七時からはNHKのニュース以外の番組を見せてもらったことはなかった。以前、父親に嘆願しても、あっさりと却下されて相手にもされなかった。それ以降、僕は諦めた。姉も兄も余計な叶いもしないお願いをすることはなかった。

   

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