俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.08.20 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第8回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 天づたふ日は没りゆかむ流氷の ひかりを失せて海はかくれる 流氷を避けて港にもやふ船 舳を並べ春の待たるる 海峡をへだてて迫る国後の 高嶺が被く雪かがやけり
小説 『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 武 さき ホテルの出口から見知らぬ女と一緒に出てくる夫を目撃してしまう。悔しさがこみ上げる。許せない。裏切られた。離婚しよう。 「ねぇ、すみません。カフェオレのお代わり下さい」今、ドーナツ屋さんで大好きなホットカフェオレを飲みながら主人との生活や子供達そして三週間前の事を思い返している。あの時、あの時間にあそこを通らなければ。たられば状態でいる私。主人以外に興味がなくて、一途の愛だった。敬愛という言葉は主人のためにあると思った。二人の息子は独立し幸せな家族に恵まれて、一安心している矢先に三週間前の出来事があった。真面目で…
小説 『高校生SM 』 【第10回】 大西 猛 私と先生の間にはガラスのように見えない、高い壁があった。どんなにあの人のことが好きだからといって、付き合うことはできない。近づくには限界があった。 私は気づくとあの人の後を追い駆けていた。あの人は廊下の端を生徒を避けながら歩いていた。私はあの人を追い抜き、その行く手を阻んだ。驚くあの人の顔は一ヵ月前と同じだった。「先生、お久しぶりです」私は一か月前なら眩しくて見られなかったあの人の顔を真正面から見つめた。「おお、久しぶり」あの人は私の顔を覚えていただろうか。夏休みの間一度でも私のことを思い出してくれただろうか。確かなのは今あの人の目は私に向…