俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.08.21 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第9回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 近づけばくろくおほきな鯱なりき 母子なるらし背びれ振りあふ 見るからに鯱の母子の羨しけれ 潮ふき合ひつつ遠ざかりゆく 河骨の黄金の花の茎だちて 湖のほとりは花明りする *河骨 スイレン科の多年草。知床二湖にて。
小説 『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様[人気連載ピックアップ]』 【第2回】 武 さき 「もうあなたを愛せない!」別れを切り出した夜、主人は何も言わず私のベッドに入ってきて... 「明日から行くから」と。私は無視して二階に上がった。主人がシャワーから上がって寝室に入ってきた。主人に背を向け寝ているふり、主人が私のベッドに入って来た。「何!」大声で言い放った。主人は何も言わず私を抱こうとした。「何を考えているの!」「やめて!」主人は人が変わったように無理やりキスをし、パジャマを脱がしている。「放して!」言っても手を止めない。凄い力。初めてだ。首にキスをし、胸をつかんでくる。…
小説 『SHINJUKU DELETE』 【第2回】 華嶌 華 “トー横”から奥へ奥へ、少女をストーキングする“キャリアウーマン”。…なんだろう。地下に潜り、重い扉を開けると… 見慣れた牛丼屋や中華食堂チェーンを左に見ながら直進、カラオケ、コンビニ、カフェ、焼肉、キャバクラ、ラブホテル、漫画喫茶、狭い道を抜けると、独特の形をしたランドマークタワーが見えてくる。タクシーが横切るのを見送って、信号のない横断歩道を渡り、深緑の高架下に足を踏み入れる。壁面に描かれた平和めいた小学生の絵にホームレスが凭(もた)れかかっているのを見ても、国が対処すべき社会問題だと意識から切り離す。…