「は?私ですか?」
「そうです」
「何か?」
「すいません。弟子にしていただけませんでしょうか?」
ああ、弟子にね。
「え?」喜之介は大きな声を出した。
「弟子にしていただけませんでしょうか?」
「はあ?」さっきの「え?」より、さらに大きな声が出た。
きのうも驚いたが、きょうはその驚きが二倍だ。増し増し。
その驚きを整理する。
まずは、また弟子入り志願者が現れたこと。一人だけでも驚きなのに、ナント! 二日連続で二人。
そんなことってある? あるんやなあ。これは現実やもんねえ。頭の中で呟く。
その二人目の弟子入り志願者だが、きのうは若いイケメン。
きょうは……オッサンやないかい!
そう、どこからどう見てもオッサンや。
ゴワゴワした髪が整えられず無造作に頭上に覆いかぶさっている。白髪交じりだ。限りなく細い目。そして、小太りの体型。せり出した腹は間違いなくオッサンの象徴だ。
五十三歳の喜之介に対して、このオッサンは……まさかの年上?
いや、そこまではいかないか。
だが、明らかに五十歳は過ぎているだろう。そう見えた。
「弟子って、ひょっとして、この僕に?」
「ハイ。ここには師匠しかいてはりませんけど」
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