口頭で語っている時は気付かなかったが文字にしてみて発見したこともあった。ノーベル賞の受賞者も一国のトップも生きていれば唯のひとりの例外もなく家か施設かの選択はあっても介護に行きつく。

この点を打った「唯のひとりの例外もなく」──自分がふだん思っていたことであるのに文字にしてみて驚いたというより自分の表現に感動したといってもいい。そのことは社会に介護、老人ホームを情報発信していこうという思いをさらに強くした。

少子高齢、八掛社会のまっただ中である。介護事業はまさに成長産業だ。しかしこの成長産業と言う時、私はなんとも妙な気持ちに襲われる。すでに成長は終えて下降していく我々を引き受ける産業が成長産業と言っても私の内には決してポジティヴに受け止められない思いである。

しかし成長産業であるからこそ、入居者とスタッフの現状をもっと知らねば優秀な企業とは言えないというのが私の持論である。

その持論を裏付けるように私の本を読んでくれた人は家族、友人、知人を通して広がりその読後感に励まされてきた。そして同時にホーム内に「介護」「老人ホーム」の質の底上げをし、さらにその情報を発信していこうという仲間ができたのだ。

尾沢さんは日経を読んでいるが新聞の記事はもちろん私には知り得ない彼自身が持っている情報を適宜送ってくれた。それともうひとり、私の隣りの部屋の弘田さんだ。

彼女は感情に走りがちの私を少し落着かせてくれる。なにより私の目の届かないところの情報を私と同じ目線で伝えてくれる。私は彼女とのつながりの中でうれしいことは倍増し、辛いことは少しだが軽減できることを知った。

こうして多くの人々に背を押されながら『終の棲 Ⅴ』に向かっている。書き切れないエピソード、思いは「Ⅵ」で書いていこう、そんな思いさえ抱いている昨今である。

 

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