〈序章 202×年3月某日(土曜)昼過ぎ〉
「それでは早速、プレゼンを始めていきたいと思います。
順番による投票への影響などを避けることができればという思いもありまして、ここにありますボタンを押すと、4つの小会議室のいずれか1つに、無作為に音声がつながる仕組みになっています」
(白川が、大スクリーンにも映し出されている、演壇に備え付けられた順番選択ボタンを押した)
「皆さん、トップバッターは政治に関するテーマです。『議員制度の見直し~政治を歌舞伎のような世襲制にしない日本』です。さあ、スローガンを一緒にご発声ください。
今のこのままの日本でいいのか!」
(会場内に響き渡る)
「それではお願いいたします」
会場内の拍手を聞き、大スクリーンに映し出された無音だが無数の画面越しの拍手を眺めながら、冒頭の司会を、持ち時間を超過しながらも無事に終えた白川は、ついに、学問の世界から実践の世界への大きな第一歩を踏み出すことができたと感慨に耽っていた。
そして、先ほど「急げ」と手を回していた事務局長の深田宏之、チャットのデモ実演をお願いした西尾泰治と、高校時代に出会えたことが、今のこの瞬間につながっていることを改めて感じながら、あの頃は4月の入学式の頃が桜のシーズンだったわと思った。