3 課題

真琴は、こういう時、物怖(ものお)じしない性格で理路整然と意見を述べる。やはりのんびりしていても実業家の娘だ。

「篠原さんは、今朝、わたしと一緒に現場についてきてくれたのです」

「ついてきてくれた? それはどうして?」

真琴の表情には迷いのようなものはない。すらすらと続けた。

「実は、篠原さんの義理のお兄さんは所轄の刑事なんですが……」

関根教授は、ほうといった表情を見せた。

「それで、そのお義兄さんが今捜査しているのが、うちの父の事件なんです」

「お父様の事件……」

関根教授は、ニュースで流れたことくらいしか火事の状況を知らなかった。確か火事の原因は火の不始末からくる「事故」ではなかったか。それが真琴は今、意味ありげに「事件」と強調した。勘のいい関根教授は思案の表情を見せた。

「そうでしたか……」

それ以上、深く追求してはならない空気を感じた。

「篠原さんは、いち早くお義兄さんから火事のことを聞きつけて、わたしのことを心配して……。わざわざ今朝も一緒についてきてくれたのです」

真琴の熱心な声が部屋に響いた。

「分かりました。それでは篠原さん。今、櫻井さんが言った通りで間違いないですか?」

関根教授が最後に事実確認をする。

「……はい」

あずみは小さくなって答えた。