医師は「あとどれだけ生きられるんですか?」と患者さんから質問された場合には、この生存期間中央値を「平均余命」として答えているのです。

図3で説明しましょう。

例えば、ある研究でがんの患者さん99人にA治療を始め、また別の99人にB治療を始めたとします。

99人中で50人目の患者さんが亡くなったのは、A治療を開始したグループでは15カ月目、B治療を開始したグループでは7カ月目であったとします。

医師は胃がん患者さんに治療の説明をする時、平均余命はA治療では15カ月、B治療では7カ月ですと説明するのです。考えてみると、A治療を受けた患者さんの48人は15カ月より長生きで、残りの48人の余命は15カ月より短いのです。

患者さんの体調は比較的最期まで保たれ、体調が悪化した期間はある程度予測可能心・肺疾患末期や認知症・老衰と比べて、がんの場合、比較的機能は保たれますが、最期の数カ月で急速に身体機能が低下します注2)

医師はこの最期の期間を食欲不振・呼吸困難などの自覚症状、白血球数などの検査値、また今までの経験などからある程度予測できます注3)

この期間を医師が家族に説明する時、この残された時間を「日単位」「週単位」「月単位」などと表現することが多いと思います。

図3 A 治療とB 治療のカプラン・マイヤー生存曲線