第2章 患者さんの疑問に答える
抗がん剤以外の治療

4 放射線治療(粒子線治療)で治らないですか?

手術、放射線、抗がん剤が、がん治療の三本柱 

まず、悪性腫瘍に対する基本的な治療の説明が必要です。これには大きく三つの柱があります。手術、放射線、抗がん剤です。手術可能であれば、できるだけ手術的に切除するというのが原則です。

けれど、根治手術が難しい場合や手術と同程度の効果が期待できると判断される場合に放射線と抗がん剤を各々単独でまたは組み合わせて治療します。患者さんとご家族は、抗がん剤治療は副作用が心配だからそれ以外の「体に優しい治療法」はないか、という意味の質問をされることがよくあります。その時に出てくる言葉に放射線治療があります。

最新の放射線治療は粒子線治療

本題の放射線治療の説明をしましょう。放射線治療には以前からある電磁放射線(ガンマ線、エックス線)と最近出てきた粒子放射線(陽子線、重粒子線、中性子線)があります。この二つはどこが違うのでしょうか。

腫瘍に放射線を当てて腫瘍をやっつけるという点では同じなのです。体の深いところにある腫瘍に電磁放射線を当てようとすると腫瘍より浅いところにある正常組織にも大きなダメージが生じるため、腫瘍に十分な線量を当てることが難しいことが多いのです。

粒子放射線を用いると腫瘍だけに大きなエネルギーを当てるため、周りの正常組織の障害を最小限に抑えられます。ただし現時点では、今までの電磁放射線に比べて粒子線治療が優れているのかという疑問に関して、副作用やコストも考慮した検討は十分ではありません。