両親の結婚
父
父は金銭出納帳をつけていたが、実に細かく正確に記録していたようだ。帳簿上の残高と手元現金在高が、いつもピッタリ合っていたというから、すごいを通り越して異常ではないかと思う。一円でも合わないと気が済まなかったらしい。さらにお金に細かいだけではなく、いわゆる典型的なケチだった。
父は大学の先生だったから、そこそこの収入を得ていたはずである。少なくとも平均的なサラリーマンの給料よりは高い給料を大学からもらっていたと思う。
しかし、父は母に十分な生活費を渡していなかった。そのくせ、食べ物はケチるな、美味しいものを食わせろと注文をつけていて、いつも母はやりくりに苦労していた。
父は単にケチであるだけではなく、食材や衣類の値段に疎い物価オンチだったと思う。ゆえに金銭面における母の苦労は並大抵ではなかった。時には、父からもらった生活費を全部使ってしまい、自分のお金で何とかしのいだこともあったと、母から聞いたことがある。
いつも美味しい食事を作って用意しなければならないということは、食費はほとんど削れなかっただろうし、それ以外に日用品などの必需品も買わなければならないわけで、どこで節約するかとなると衣類ということになる。
母は洋裁や編み物ができたので、私が小学生の頃は、母の手作りの服をよく着ていた。母も自分の着る服は節約していたのか、いつも同じような服を着回していた。