第3章 鍼灸師が扱う代表的疾患改善の施術法

頚椎症(ムチウチ症・五十肩の治療法を含めて)

4.私の見解

頸椎症は、単独原因でおこることもありますが、実はその多くが、複合的原因でおこるものです。

例えば、日頃の悪い姿勢により、頚椎を支持する筋・筋膜・靱帯に疲労が蓄積して、頭部の重さに耐えきれなくなると、頚椎の前屈・後屈・側弯がおこりやすくなります。

又、加齢や日頃の運動不足により個々の頚椎間の摩耗的狭窄が進むと、椎間から出る血管運動神経が圧迫されることによる血行障害が起こり、頚椎の形態を維持することが困難になり、更なる頚椎の形態異常が進行することにもなります。

又、長時間一定方向にのみ首を傾けたり(飛行機・新幹線・電車・バス等で窓の外や窓の内側ばかりをみている場合などの姿勢を思い浮かべてみて下さい)、ムチウチ症のように突然の外部的物理的圧力を受けた場合にも、特定部位の筋・筋膜・靱帯の拘縮が起こる結果、頚椎の変形がおこります。

従って、頚椎症の治療では、どのような状況で現在の状態になるに至ったのかを患者さんから詳細な聞き取りをして、原因を分析・検討する事が、治療方針上、重要になります。

同時に、既述・腰痛症の項目でも記した通り、頚椎症は骨格系変形と連動しますので、側弯治療や骨盤調整も並行的・基礎的治療となる事を知る必要があります。