第3章 鍼灸師が扱う代表的疾患改善の施術法
頚椎症(ムチウチ症・五十肩の治療法を含めて)
6.施術手順
それは、各横紋穴と趾間穴へ鍼又は指圧での刺激を加えると、脳脊髄神経にその刺激が伝達され、同時にその「反射効」として「特定の」頚椎支持組織に血流が増加し、組織の硬結が寛解する、という経験的事実です。
臨床家の先生方ばかりでなく、広く一般の方にも応用の利く方法ですので、是非追試して欲しいと思います。注意すべきなのは、この方法は脳神経に「痛い」という感覚が伝わるために、必要最小限の痛みを加える必要があるということです。「我慢できる程度の痛みの感覚」と、理解して下さい。
刺激を与える部位と、反射効で生じる、血行改善に関連する筋肉系の寛解効果を以下に列挙します。
第1趾裏横紋 首の根元から肩甲間部にかけての僧帽筋全体
第1趾第2趾間穴 頚椎6番7番の直側と、脾経支配領域の筋肉系第2趾裏横紋 頚椎5番6番の直側と、胃経支配領域の筋肉系
第2趾第3趾間穴 頚椎4番5番の直側と、第二大腸経支配領域の筋肉系
第3趾裏横紋 頚椎4番の直側と、小腸経支配領域の筋肉系
第3趾第4趾間穴 頚椎3番4番の直側と、大腸経支配領域の筋肉系
第4趾裏横紋 頚椎2番3番の直側と、第二膀胱経支配領域の筋肉系
(特異効果として大脳皮質聴覚野への血流増加があります)
第4趾第5趾間穴 頚椎1番2番の直側と胆経支配領域の筋肉系
第5趾裏横紋 頚椎1番の直側と膀胱経支配領域の筋肉系
(特異効果として大脳皮質視覚野への血流増加があります)
・ 施術者二名一組で施術できる場合には、一人が仰臥位の患者さんの頭部について、調整が必要な頚椎(頚椎の位置異常の原因となっている頚椎付近の筋硬結)を確認して、他方が上記趾裏横紋や趾間穴への単刺若しくは指圧による刺激を加えます。
すると、該当部位の筋肉系が寛解しますから、すかさず、硬結があった頚椎付近に指を当てて、患者さんに自身の意思で首を左右に動かしてもらいます。
その後、患者さんには坐位になってもらい、自身で肩回し、首回しをしてもらって、違和感が消えたか否かを確認してもらいます。違和感が少しでも残っているようでしたら、同様の施術を繰り返します。
違和感が取れると、今まで気にならなかった部位も違和感として気づくようになりますから(腰痛症の治療中でも詳述したように、椎骨の変形は、最大原因箇所の上方と下方の各々反対方向箇所にも軽い変形を起こすものだからです)、今と同様な与刺激による調整をします。