第一章 一九九八年 夏
八月十二日(水) 晴
着任挨拶
KOKに初めての「常駐日本代表」として着任したので、まずは関係者に挨拶回りをすることとした。
まず、KEDOから建設工事を受注した韓国政府系企業の韓国電力公社KEDO原子力建設本部(以下「韓電建設本部」と表記)を表敬訪問し、一時帰国中の本部長を除くS副本部長以下全部長と歓談した。どうやら余暇にはテニスをするらしいので、「私も仲間に入れてほしい」とお願いした。
次に、下請け建設会社の組織である合同建設施工企業団事務所(以下「施工企業団」と表記)にも挨拶に行き、帰国休暇中の所長を代行しているU管理部長と歓談した。
続いて、住居地域及び建設サイト全体を視察した。
その後、琴湖(クムホ)地区出入国事業処に在留許可を申請し、社会安全部琴(クム)湖(ホ)支所に日本の運転免許証から北朝鮮の運転免許証への切り替え申請手続きを済ませ、我々が利用できる北朝鮮側の関連施設を視察した。
日本の戦後がよみがえる
住居地域と原子力発電所建設用地(建設サイト)を結ぶ道(約五・三キロ)は、通勤の行き帰りに北朝鮮の住民を観察するのに格好の場所だ。
今日は、その道に平行して走っている線路(電化されている)に客車が通過するところに出くわした。車両のみすぼらしさと、乗客が鈴なりになっているのに驚いた。かつて写真で見たことのある日本の戦後の買い出し列車という感じだ。軍服姿が目立った。