木々のささやき

コニファー

長かった離婚調停が決着し、離婚が成立した。別れた妻に幾ばくかの財産を分与し、二十年住んだ県央の海沿いのマンションを引き渡すことになり、その他にもいろいろあって引っ越すことにした。

当時、ボクは水の浄化や排水処理、水環境関連企業の技術系顧問、専門誌への寄稿を生業としていて、仕事を続けるには水を扱える小さな実験設備や駐車場や事務のスペースが必要だったから、改造やリフォームが出来ない借家やマンションに越すわけにもいかず、小さくても家を建てる必要があった。

同じ県内の西の端に小さな土地を買い、安易な注文住宅を避けて、地元の大工に頼んで木造二階建ての一戸建てを普請した。急ごしらえのわりには細かい造作に拘ったから大工仕事に手間がかかり、着工から竣工までは概ね四ヶ月ほどかかった。

前年の秋の終わりに着工し、寒い時期を経て春先に竣工したから、引っ越しは翌年の春になった。