転居を決めてから土地を求めて設計や業者との打ち合わせもそこそこに着工して、竣工して、引っ越しをして、住所も電話番号も変わって、と、追い立てられるような日々が続いたので、越してからしばらくは茫然と時を過ごした。
そんな慌ただしい日々が過ぎて少し落ち着いたころ、新築祝いとして知り合いから寄せ植えの小鉢をもらった。鉢はコニファーとシダ類の一種と他の観葉樹を併せた綺麗な寄せ植えだったが、詰め込み過ぎて窮屈に見えたので分けることにした。
コニファーの苗木は見たところ杉の木に似ていて、しかし、それほど大きくない。地植えにすると大きくなって始末に困ると思ったので、そのまま鉢植えで育てることにした。
初めは観葉植物代わりのインテリアとして居間に置いたが、日当たりの良い場所だったし、水やりを欠かさなかったので苗木はどんどん大きくなる。プラスチック製の鉢はすぐに小さくなった。
常緑針葉樹でヒノキ科の一種であるコニファーは、鉢植えでは根の酸素不足で葉の先が枯れてくる。酸素を取り込みやすいよう木製の植木鉢に植え替えたが、冬場は室温が高いと葉落ちするから室内には向かない。
結局、室内に置くには大きくなり過ぎたので室外に出した。日陰に強く、庭木代わりに良いので北側のウッドデッキの端に置き、木製の鉢が小さくなると大きいものに替えた。
スギの木に似た木は外に出して二~三年もすると小さな庭木程度の大きさに育った。この大きさの木をウッドデッキの端に均等に並べると形もいいし目隠しにもなる。
木製の鉢をもう一サイズ大きいものに替えるとき、似たサイズのコニファーを四本買い足してウッドデッキの北側に並べた。
育ち上がったコニファーが五本並ぶと、家の北側はそれなりに壮観で見栄えもする。気を良くして施肥をし、夏の間も水やりを欠かさず、まめに世話をしていると木はどんどん大きくなり、その大きさに合わせて鉢を大きくすると木はまた育ち、それを繰り返すと木はボクの背丈を優に越えるまで育った。
木が大きくなるたびに替えていた木製の鉢は、やがて、市販品で一番大きなサイズのものになった。植木鉢を替えようとしてもこれ以上のサイズはない。同じサイズの鉢に植え替えるにしても密集した根をそうとう切らないと入らない。
初めは観葉植物の代わり程度に考えていた木は、そのころには地植えの庭木程度に大きくなっていた。そうなると木も鉢も重たいから植え替えそのものが大変だし、それが五本もあると始末に負えない。
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