原田は必死だった。田端からキリキリとした殺気を感じたからだった。自分を説得しようとする昔の同級生に田端はフンと鼻で笑ってみせた。
「吉村からのラインは、俺しか知らないことまで全部言い当ててたんだ」
「言い当ててたって……」
「俺の行動のすべてがわかってるって、吉村は言った。俺がやってきた過去は全部当てられた。そして、未来も当てたんだ」
「未来って」
「これから起こること。今日の朝からこの時間までの学校生活も当てたんだよ。吉村は」
田端の言葉に原田は口の中が渇いてきた感じがした。そんな彼に田端は話を続ける。
「原田、おまえさ、高校の頃、俺たちが吉村をイジメていたのを陰からいつも見てただろ」
「そっ、それは……」
「吉村が電車に飛び込んで自殺したって言われてるけど、あそこには俺と福井もいたんだよ」
「え……」
「原田も知ってるだろ。吉村が線路に落ちるところを、おまえも見てたんじゃないのか」
「……いや……俺は何も見てない……」
こう答える原田の脳裏には、電車のホームで田端と福井が吉村に何か言っている映像が浮かんでいた。しかし、この時の原田はなぜこのような映像が頭に浮かんでくるのかわからなかった。
(ホームで田端と福井が吉村に何か言ってる場面なんて、俺は知らない……いや、知らないのになんでこんなことが浮かんでくるんだ?)
急に黙ってしまった原田に、田端は少しずつ近づきながら言った。
「まさか、吉村が死んだショックでなんにも覚えていないって言うんじゃないだろうな」
「そんな……覚えてないもなにも、俺は知らないよ」
「ふん」
田端は鼻で笑うと、原田に対して不敵な笑みを見せた。
「原田、おまえがシラを切っても吉村が見てるんだ。おまえがホームにいたことを覚えているって言ってたよ」
「そんな……そんな幽霊の吉村の言うことを信じるのか?」
「だから言ったじゃないか」
田端は原田の近くで包丁をちらつかせながら言う。
「死んだはずの吉村からきたラインは、俺の過去や未来も言い当てたって。原田、今日おまえが俺を殺しに来るっていう未来も、吉村が言い当てたんだ」
「いや、違う! だから俺がここに来たのは、お互いに殺し合いをしないように協定を結ぼうと言いに来たんだ」
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